伴侶 Company
一つの声が闇のなかの誰かにとどく。想像すること。
一つの声が闇のなかで仰向けになっている誰かにとどく。とりわけ背中にかかる圧力でそれがわかり、彼が眼をあけてはまたつむるとき闇の変化する様でそれがわかる。言われたことのごく一部しか確かめられない。例えば、おまえは闇のなかで仰向けになっている。と言うのが聞こえてくるときなど。この場合彼は言われたことを認めるしかない。しかし、言われたことの大部分はとても確かめられない。例えば、おまえはこれこれの日、日の目を見た、と言うのが聞こえたときなど。例えば、二つが結びつくこともある。おまえはこれこれの日、日の目を見た、そして今おまえは、闇のなかで仰向けになっている。おそらく、一方に他方の明白さを波及させようとする策略だ。そこでこんな命題が成立する。闇のなかで仰向けになっている誰かに、一つの声がひとつの過去を告げる。場合によっては現在に関することだか、まれには未来に関することだ。例えば、おまえはちっともかわらないまま、くたばってしまうだろう、というふうに。そして別の闇、あるいは同じ闇に、もう一人の誰か。すべてを自分の伴侶として想像しながら。そっとしておこう。
S・ベケット「伴侶」(宇野邦一訳)




